ダイヤモンドカッターを使っていて
「あれ?まだ刃が残っているのに、切れなくなったぞ?」という経験はありませんか?また
「いつもは、このダイヤでこのタイル、スイスイ切れるのに、今日は切れないぞ?」
という事はありませんか?
もしくはいつも使っているダイヤの新品をおろした際
「使い始めなのに、全然切れない!」
という事はありませんか。
上記のような経験をされたお客様より
「品質にバラつきがあるんじゃないの?」とお問い合わせをいただくことが
年に1~2回ほどあります。
お客様よりそのダイヤを送っていただき詳しく調べたところ、
当店のダイヤに関しては、上記のような症状が起きた時、
品質のバラつきが原因の可能性はほぼないことがわかってきました。
それでは、そんな時何がおきているのでしょうか。
なぜそうなってしまうのでしょうか。

これらの原因は一言で言うと
「ダイヤの表面の状態が悪く、一時的に切れない状態になっている。」
からです。
それを解消するには、「めだし」という作業が必要になります。
「めだし(めたて)ならいつもやっている」
という方もいらっしゃると思いますが、ごぞんじない方もいらっしゃいますので、
お付き合いください。
「めだし」のやり方は簡単です。
ブロックなど、軟らかい素材を少し切ってみるだけです。
これだけで、切れ味が戻ってくるはずです。
ここで、ダイヤモンドカッターについて説明いたします。
ダイヤモンドカッターは、「刃」と呼ばれる部分のボンドに、細かいダイヤモンド砥粒がランダムに配置されています。※手で触るとざらざらと感じる小さな粒がダイヤモンド砥粒です。
このダイヤモンド砥粒で切削対象を切っていくのです。
切断していくとボンド部分が削れて減って行き、
ボンドに埋まっていたダイヤモンド砥粒がどんどんあらわになってきます。
そして、最終的にダイヤモンド砥粒はポロッと落ちてしまいます。
ただし、その頃には次の、ダイヤモンド砥粒が頭を出して来て仕事をしていますので、
切れ味が断続的に続いていくというつくりになっています。
しかし、切断する素材、機械、スピード、タイミングなどによって、
このダイヤモンド砥粒のサイクルが止まってしまい、次の3つの状態になる事があります。
1 「めづまり」
切っている素材が、ダイヤモンド砥粒のあいだを埋めてしまったり、覆ってしまったりして、ダイヤモンド砥粒が仕事ができない状態になっている。
2 「めつぶれ」
ダイヤモンド砥粒の先端が破砕してしまって、仕事できない形状になっている。
3 「めこぼれ」
まだ仕事をすべきダイヤモンド砥粒が落ちてしまって、切るのに必要なダイヤモンド砥粒の数が足りていない。
この3つのどれかがおこっているのが、冒頭の「刃が残っているのになぜか切れない」状態になります。
この3つの状態を解消する簡単な方法が「めだし」なのです。
ブロックを切断することでボンドが削れて、丸まったダイヤモンド砥粒が抜け落ち、
埋まっていた新しいダイヤモンド砥粒が頭を出してきますので、切れ味が復活します。
新品なのに切れない場合は、「め」が出ていない状態なので、
いつもより浅め(半分位)に刃を入れていつもりより早くおくって切るか、
めだしをかるくすれば、本来の切れ味になります。
「それなら、ダイヤモンド砥粒が途切れないようにたくさんダイヤモンド砥粒を配置すればよいじゃないか!」
とも思うのですが、ダイヤモンド砥粒を多くすると摩擦が大きくなり今度は肝心の、切れ味が低下してしまいます。
このダイヤモンド砥粒の選定、配置、ボンドの配合でダイヤモンドカッターの基本的な性能が決まります。
対象の切削物に対して最高の切れ味になるようにダイヤモンド砥粒量が設計されているのですが、
そうするとどうしても、そういった症状が起きてしまう事があるのです。
(どんな素材に対しても素晴らしく切れるダイヤモンドカッターは存在しないのも、上記の理由によるものです。)
タイミングの問題ですので、同じ商品でも、そういった状態が起きるダイヤと、起きないダイヤがあります。
こちらは、どちらのメーカーのダイヤモンドカッターも、商品の原理は同じですので程度の差はあるかもしれませんが、おこりえます。
冒頭のようなお声をいただいたお客様にめだしのご案内をして、
「ブロックがない場合はどうするの。」とご質問いただいたこともありますが、
ブロックが難しいようでしたらレンガでも代用できます。そんなに大きなものでなくても大丈夫です。
ぜひ、ひとつ何か現場にご用意いただければ幸いです。
(その場では、いったん外して予備のダイヤを使用して、後でめだしする方もいらっしゃいます。)
ダイヤモンドカッターの刃がまだ残っているのに切れなくなった時、
実は中にはまだダイヤモンド砥粒がたくさん残っています。
もし次回そんな事があった場合は、そこで捨ててしまったりせずに、めだしして最後まで使い切ってください。